抄録
血栓形成のもっとも重要な因子のひとつに内膜傷害がある。われわれは実験動物として家兎を用い血栓形成機序を形態学的に検討した。内膜をバルーンカテーテルで傷害すると内皮剥離部に血小板粘着がみられ,種々の程度の血小板凝集を伴っていた。凝集血小板表面にはフィブリノゲンやフィブロネクチン,vWFをみとめた。ポリエチレンチューブによる傷害では一部の大きな血小板血栓塊内にフィブリン析出をみとめた。ポリエチレンチューブやワイヤチューブでの内弾性板破綻部ではフィブリン析出が著しかった。ポリエチレンチューブ傷害後3週目には内膜の線維性肥厚巣が形成されるが,同部を再度ポリエチレンチューブで傷害すると著明なフィブリン析出を伴う血栓形成を認めた。肥厚内膜には多量の組織因子が含まれ,それにより正常内膜に比較し凝固因子の強い活性化が起こるものと考えられた。