抄録
症例は54歳,男性。1986年10月よりリンパ球増多(WBC 15,700/μlうち核小体明瞭なリンパ球様細胞76%)があり,1990年9月呼吸困難にて入院した。頚部,腋窩に紅斑があり,リンパ節腫,肝脾腫,胸部X線上,両側に胸水を認めた。白血球数は232,900/μlうち99%が核小体を有するリンパ球様細胞であった。表面形質はCD2+, CD3-, CD4+, CD7+, CD8-。Southern blot法にてT細胞受容体β鎖遺伝子のmonoclonalな再構成を認めた。皮膚生検にて,MT1陽性の細胞浸潤あり。腋窩リンパ節生検は,T細胞型のびまん性中細胞型悪性リンパ腫の像を呈した。抗human T-cell lymphotropic virus type 1 (HTLV-1)抗体とHTLV-1 proviral DNAは陰性であり,T-cell prolymphocytic leukemia (T-PLL)と診断した。化学療法を施行し,皮疹,リンパ節腫,肝脾腫,胸水は消失したが,prolymphocyteは910,000/μlに増加し,1991年7月脳出血にて死亡した。本例は,5年間の経過を観察し得たT-PLLと考えられた。