1993 年 34 巻 3 号 p. 321-327
脳内腫瘤形成で再発した56歳男性AML (M1) t(8;21)の1例を経験し,その臨床検査所見および剖検所見を報告するとともに,本邦既報告例13例を含めその特徴を検討した。本例は剖検において,両側睾丸,消化管の腫瘤形成も認められ,肝,脾,腎への芽球浸潤も高度であった。脳内腫瘤形成で発症する症例は本例のように巣症状を呈することがあり,出血,浸潤による症状とは異なっている。腫瘤形成は,CTスキャンでほぼ診断可能である。平均年齢は38.9歳,9対5で男性に多く,FAB分類の明らかな9例中5例がM2であり,染色体を検索した6例中t(8;21)を有するものは1例であった。治療としては放射線照射が有効である例が多いが,予後は不良である。本例ではCD56陽性であり,その細胞間接着因子としての性格と,髄外腫瘤形成との関連は興味深い点である。