抄録
重症肺炎を合併した重症再生不良性貧血(SAA)に対し,顆粒球輸血を行いながら緊急の骨髄移植を施行し,救命しえた一症例を経験した。患者は16歳の女性で,著しい汎血球減少症で発症し,SAAと診断時に重症肺炎を合併した。患者,家族のHLA検査により,弟とHLAが一致していることが分かり,cyclophosphamide (CY)とウサギ抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン(ATG)の前処置で緊急に骨髄移植を行った。顆粒球輸血を移植前後に施行して重症肺炎の悪化を阻止し,移植後の造血能の回復により肺炎は治癒した。急性および慢性GVHD症状は認められず,血液学的に正常化した。ウサギATGは移植片の拒絶を防止し,前処置として放射線照射に変えて使用できると考えられた。