臨床血液
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症例
寛解期に肺ムーコル症による胸部下行大動脈穿破をきたし,喀血死した急性骨髄性白血病の剖検例
和泉 典子熊谷 裕昭新藤 徹郎
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2000 年 41 巻 11 号 p. 1201-1207

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抄録

症例は16歳,女性。血液検査で貧血を指摘され1998年4月当院入院。AML(FAB分類M2)と診断した。初回寛解導入療法で寛解に至らずMEC療法で完全寛解に到達。6月22日から第1回地固め療法を開始した。約1週間後から高熱と背部痛が出現し,7月8日のCTで左肺上葉(S1+2)縦隔側に胸部下行大動脈に接して約3 cm大の腫瘤を認めた。広域抗生剤に加えfluconazoleを併用した。7月21日の骨髄は寛解を維持していた。7月24日のCTで左肺上葉の病変は空洞化しており,肺真菌症と考えられた。骨髄回復とともに症状は改善傾向にあり,抗真菌剤をitraconazoleに変更したが7月27日突然大量喀血し死亡した。部検所見:左肺上葉の空洞化病変は胸部下行大動脈と癒着し,大動脈壁を穿破していた。穿破部大動脈壁内に炎症性細胞の浸潤とムーコル菌糸の貪食像が認められた。大動脈栄養血管はムーコル菌糸により血栓性閉塞をきたしていた。

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© 2000 一般社団法人 日本血液学会
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