2001 年 42 巻 9 号 p. 691-695
症例は28歳の男性。1999年1月に原因不明の急性肝炎を発症した。他院にてグリチルリチンの投与により肝機能は改善傾向にあったが,6月頃より汎血球減少が徐々に進行し,7月には白血球1,100/μl(好中球590/μl)となり,G-CSFの投与を開始され,8月に当科に転院した。白血球4,400/μl, 好中球3,340/μl(G-CSF投与下),Hb 9.8 g/dl, 血小板2.4×104/μl, 網赤血球4.7×104/μl, 骨髄は低形成であり,AST 156 IU/l, ALT 386 IU/lの肝障害を認め,肝炎後再生不良性貧血と診断した。ATG, シクロスポリン,G-CSF併用療法を開始し,開始直後より肝機能は改善傾向を示し,7日目には血清肝酵素値は正常化した。また,汎血球減少は9日目頃より徐々に改善し,60日目には白血球4,200/μl(G-CSF投与なし),Hb 12.0 g/dl, 血小板9.0×104/μl, 網赤血球4.1×104/μlまで改善した。肝炎後再生不良性貧血は一般に予後不良だが,本症例は免疫抑制療法により肝炎と汎血球減少の両方の著明な改善を認めたので報告する。