2005 年 46 巻 12 号 p. 1288-1292
症例は脳梗塞の既往を有する56歳,女性。CML第1慢性期で,fludarabineおよびcyclophosphamideを前処置に用いた骨髄非破壊的同種末梢血幹細胞移植を施行した。移植後の血液毒性は軽度であり,輸血を必要とせず,感染症も認めなかった。day 56時点でもリンパ球(ドナータイプ70%)および好中球(同0%)のミックスキメリズムが続いたため,day 68にドナーリンパ球輸注(DLI)を施行し,免疫抑制剤を中止したところCMLへのgraft versus leukemia (GVL)効果を誘導できた。しかしドナーリンパ球分画は残したまま,拒絶により汎血球減少および骨髄低形成となったため,前処置を行わずに再度造血幹細胞の移植を行った。day 187には造血は完全にドナー型となり,CMLは分子的寛解状態となった。本症例の最初の移植では,骨髄非破壊的な前処置とその後の免疫抑制剤投与により,ドナーの造血幹細胞は生着しなくても,ドナーのリンパ球の生着が可能であることが示唆された。すなわち最初にドナーのリンパ球分画のみを輸注していても,同じ結果であった可能性がある。従って最初にリンパ球のみを輸注して,緩徐にリンパ球分画のドナーキメリズムを造り,GVL効果が起こったあとに造血幹細胞を輸注するという,細胞療法の可能性が示唆された。