抄録
53歳女性。左側胸部痛の精査のため入院。胸部CT検査で内部均一な左胸壁腫瘤像と左胸水を認めた。血液検査にて貧血, 血清IgGおよびカルシウム (Ca) の高値を認め, 血清免疫電気泳動ではIgG-λ型M蛋白を検出した。また血清neuron specific enolase (NSE) の高値を認めた。腫瘤生検および骨髄穿刺にて細胞質CD38およびIgG-λ陽性の異常形質細胞の増殖を認め, 胸壁の形質細胞腫を伴うIgG-λ型多発性骨髄腫と診断した。形質細胞腫および骨髄クロットのNSE免疫染色にて腫瘍細胞の細胞質がび漫性に染色され, NSE産生多発性骨髄腫と考えた。化学・放射線療法により胸壁腫瘤の消失と骨髄形質細胞数, 血清NSEの正常化を認め, その後自家末梢血幹細胞移植を施行し再燃を認めていない。NSE産生多発性骨髄腫は本例が2例目の報告であるが, 胸壁形質細胞腫・胸水・高Ca血症等の共通点を認め興味深い1例と考えられた。