2006 年 47 巻 7 号 p. 645-649
症例は54歳男性。腹痛を自覚し, 前医を受診したところ, CT検査で腹腔内および後腹膜のリンパ節腫大を指摘された。精査の目的で, 当院へ紹介入院した。上部消化管内視鏡検査では, 十二指腸下行脚に潰瘍を伴う腫瘤性病変を認め, 同部位を生検したところ, 中型の異型性を有するリンパ球の増生を認めた。生検組織の免疫染色ではCD3, CD8, CD56およびCD103が陽性で, T細胞受容体γ鎖の遺伝子再構成を認め, 腸管症型T細胞性リンパ腫と診断した。腸管症型T細胞性リンパ腫は吸収不良症候群であるセリアック病を基礎疾患として発症することが多いが, 本症例ではグルテン不耐症など吸収不良を示唆するエピソードを認めず, 抗グリアジン抗体も陰性であり, セリアック病の合併は否定的であった。