2006 年 47 巻 7 号 p. 656-660
症例は51歳男性。2003年4月発熱, 胸壁腫瘤, 胸水貯留が出現。M蛋白陽性, 骨髄中形質細胞18.0%から多発性骨髄腫IgGκ型, Stage IIIAと診断した。VAD療法, サルベージ療法後, 2004年1月tandem自己末梢血幹細胞移植を施行した。M蛋白は一時減少したが, 再度病勢が悪化し, 同年11月thalidomide, dexamethasone併用療法を開始, M蛋白低下を認めた。2005年2月, 下肢腫脹で入院。FDP上昇とCT所見から左下肢深部静脈血栓症, 肺動脈塞栓症と診断し, 中心静脈フィルター留置, 抗凝固療法により臨床所見は改善した。その後, 骨髄腫の病勢増悪のためthalidomide併用で種々の化学療法を行ったが抗凝固療法併用により血栓はみられなかった。Thalidomideは, その抗腫瘍効果により, 多発性骨髄腫等で臨床応用が試みられているが, 使用にあたっては血栓予防にも注意を払う必要があると思われた。