2010 年 51 巻 12 号 p. 1769-1774
症例は46歳の女性,視力低下,全身倦怠感,食欲低下があり,採血でWBC 419,300/μlと増加していた。入院後,嘔吐,回転性めまいが出現し,頭部CT検査にて小脳虫部の出血を認めた。本症例では末梢白血球の過剰な増加により,小脳の微小血管においてleukostasisを起こして出血に至ったと考えられた。その後中脳水道の閉塞を起こし急性水頭症を合併したため脳浮腫治療と同時に鎮静の目的で人工呼吸管理を開始した。慢性骨髄性白血病(CML)慢性期(masked Ph)と診断し,Ara-C持続静注とともに経鼻胃管からimatinib投与を開始した。8日間の人工呼吸管理ののち神経学的後遺症なく回復した。Complete hematological responseは18日で達成でき,9ヶ月でComplete cytogenetic responseを達成した。CML慢性期にleukostasisによる脳出血を合併する例はまれである。初診時より出血傾向のあるCML慢性期の症例においては,脳出血に注意をはらいつつ治療をおこなう必要がある。