2012 年 53 巻 5 号 p. 521-525
II型肺胞上皮細胞などに発現しているMUC1分子に属するシアル化糖蛋白抗原で,間質性肺炎の活動性の指標となるKL-6の高度上昇を認めた63歳女性のBJP-λ型多発性骨髄腫(Durie/Salmon分類IIIb, International Staging System (ISS) III)の症例を報告する。初診時にKL-6は22,030 U/mlと高値であったが,surfactant protein D (SP-D)は正常で,CT上間質性肺炎を認めなかった。免疫染色でKL-6陽性骨髄腫細胞を認め,KL-6産生多発性骨髄腫と診断した。MUC1は染色体1q21にコードされており,本例では1番染色体欠失を認めた。病勢とKL-6の上昇は一致した。bortezomibなどの化学療法に抵抗性であり,胸水の増加を認め,永眠した。KL-6が高値を示す多発性骨髄腫は化学療法抵抗性であり,造血幹細胞移植を含めた新たなる治療戦略が必要である。