2013 年 54 巻 4 号 p. 365-369
今回,単一施設における輸血後鉄過剰症の実態を検討した。2009年と2010年の2年間に年間10単位以上の輸血を受けていた血液疾患患者は合計163例で,およそ半数が骨髄異形成症候群(61例)と再生不良性貧血(18例)であった。赤血球輸血が20単位施行された時点で血清フェリチン値が測定されていた65症例中血清フェリチン値が500 ng/ml以上,1,000 ng/ml以上であった症例の比率はそれぞれ90.8%, 66.2%であった。鉄過剰症に関連すると推測される臓器障害の比率は,全体で56.9%, 血清フェリチンが500~999 ng/mlでは43.8%, 1,000 ng/ml以上では67.4%であった。今回の解析により,「輸血後鉄過剰症の全国実態調査」の結果より早期に輸血後鉄過剰症が起こり,臓器障害も出現することが明らかになった。したがって,赤血球輸血40単位,血清フェリチン値1,000 ng/mlを除鉄療法の開始基準とするわが国のガイドラインより早期に除鉄療法を開始する必要がある可能性が示唆された。