臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
症例報告
形態学的に骨髄異形成症候群に酷似した銅欠乏性貧血
菊池 拓森 毅彦清水 隆之森田 伸也香野 日高中川 健三ツ橋 雄之村田 満岡本 真一郎
著者情報
ジャーナル 認証あり

2014 年 55 巻 3 号 p. 345-349

詳細
抄録

症例は64歳,男性。急性骨髄性白血病に対する非血縁者間同種骨髄移植後に進行した慢性腎不全に対して生体腎移植が施行された。術後合併症のため中心静脈栄養が行われた。腎移植3ヶ月後より,進行性の正球性貧血(ヘモグロビン7.9 g/dl)を認めた。網赤血球0.2%であったが,白血球数,血小板数は正常であった。血清鉄,ビタミンB12, 葉酸は正常値であった。骨髄検査では環状鉄芽球の増生および一部の赤芽球系細胞の細胞質に空胞化を認めた。巨核球数およびその形態は正常であった。骨髄所見はWHO分類で環状鉄芽球を伴う不応性貧血と合致したが,骨髄系細胞にも細胞質の空胞化を認め,銅欠乏も疑われた。血清銅(33 μg/dl), セルロプラスミン(11 mg/dl)共に低値であり,経口摂取で1 mg/日の銅補充を開始したところ,急速に網赤血球は上昇し,1ヶ月後にはヘモグロビン値は正常化した。骨髄中に環状鉄芽球の増生を伴う進行性の貧血の原因として,銅欠乏性貧血を鑑別疾患の1つとして挙げるべきである。

著者関連情報
© 2014 一般社団法人 日本血液学会
前の記事 次の記事
feedback
Top