抄録
慢性骨髄性白血病(CML)の治療は,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の開発により,劇的な改善を見せた。しかし,TKI投与により深い分子遺伝学的寛解を達成・維持している症例においても,TKI中止後多くの症例は再発する。TKI中止後の再発に関わる因子としてSokalスコアなどが挙げられているが,今後,更なる因子,条件などの同定が望まれる。TKI中止後の再発の原因として,CML幹細胞がTKIに抵抗性であることが挙げられる。この抵抗性に関わる分子として,Hh, Wnt/β-cateninなどの自己複製因子,PMLなどの細胞周期制御因子,FOXO3などの代謝制御因子,CXCR4などの接着分子などが同定されている。また,IL-1RAP, CD26などのCML幹細胞特異的な表面抗原も同定されている。今後,これらの分子を標的とした新たな治療をTKIと併用することで,CMLに治癒がもたらされることが期待される。