臨床血液
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特集:血液分野の最新情報2015 ―バイオロジーを中心に (リンパ系疾患)―
急性リンパ性白血病の分子機構
玉井 勇人猪口 孝一
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2015 年 56 巻 3 号 p. 253-260

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抄録

急性リンパ性白血病(ALL)は成人がんも含め,過去30年間にもっとも予後が改善した悪性腫瘍のひとつである。ALLにおいてはこれまで形態学を中心とした病態解析の研究が進んできたが,近年のゲノム解析技術の進歩により,詳細な分子病態の解析や分類がなされるようになってきた。この項では急性リンパ性白血病の分子機構について解説した。小児急性リンパ性白血病acute lymphoblastic leukemia (ALL)は過去数十年あまりの間に治療成績は飛躍的に向上し,約90%の患者が長期生存できるようになったが,MLL-AF4陽性ALLやbcr-abl陽性ALLの予後は未だ十分でない。成人ALLに至っては予後の悪さはより顕著で,長期生存は30%前後と治療成績は全く満足できるところまで届いておらず,治癒は一部の患者に限られている。更なるALLの分子機序の解明が進み,新たな分子標的薬の開発などによって更にALL患者の予後が改善することを強く期待する。

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© 2015 一般社団法人 日本血液学会
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