臨床血液
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特集:溶血性貧血診療の最前線
日本における赤血球膜異常症
―諸外国との比較―
中西 秀和和田 秀穂末盛 晋一郎杉原 尚
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2015 年 56 巻 7 号 p. 760-770

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抄録

先天性赤血球膜異常症は先天性溶血疾患の中で最も頻度の高い疾患群である。遺伝性球状赤血球症(HS)は膜表面の喪失によって赤血球変形能の低下を招くことが病態の本質であり,病因としてアンキリン,band 3, β-スペクトリン,α-スペクトリン,4.2蛋白質(P4.2)といった膜蛋白の異常が知られている。P4.2完全欠損症は海外では稀な日本特有の病型でHSの亜型として分類されており,常染色体性劣性の遺伝形式を呈している。遺伝性楕円赤血球症(HE)はα-スペクトリン,β-スペクトリン,4.1蛋白質(P4.1)といった膜蛋白異常によって,赤血球膜骨格の脆弱化をきたしている疾患である。欧米,アフリカ,地中海沿岸地域の人種でのHEの主な病因はα-スペクトリン異常であるが,日本では稀であり,P4.1欠損症が多い。遺伝性有口赤血球症(HSt)は陽イオン透過性の異常を呈している疾患群である。

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© 2015 一般社団法人 日本血液学会
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