2015 年 56 巻 7 号 p. 831-836
バンド3(陰イオン交換輸送体1, AE1)は40-kDaのN末端細胞質ドメインと55-kDaのC末端膜貫通ドメインから構成される。細胞質ドメインは細胞骨格に対する足場を提供する一方,膜貫通ドメインは陰イオン交換輸送体として働き,体内におけるガス交換に重要な役割を果たす。我々は生理的環境に近い脂質二重層中でのバンド3膜貫通ドメインの構造解析を目的に電子線結晶構造解析を行い,7.5 Å分解能での投影像および三次元像を得た。三次元像では予想された14本の膜貫通部位の全てを確認することはできなかったが,特徴的な反並行V字モチーフの存在を確認できた。バンド3の膜貫通ドメインは大きく2つのサブドメインから成り,それらが脂質膜に対して逆向きに挿入されていると考えられた。2つのドメインは脂質膜に対して高さが異なりV字の先端はそれぞれ反対側で膜から大きく突き出ているように観察された。