2016 年 57 巻 2 号 p. 118-128
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia, AML)は骨髄系の血液細胞が腫瘍化し,分化成熟能を失って異常に増殖する造血器腫瘍の一種である。AMLに対する治療戦略はここ30年ほど大きく変わっていないが,その病態生理の解明は着実に進んでいる。次世代シークエンサーを用いた網羅的解析により,AML発症の原因となるゲノムやエピゲノム異常の全貌が見えてきた。AML発症の根源とされる白血病幹細胞に関する理解も深まり,健常者における前白血病幹細胞やクローン性造血の存在が明らかになった。現在,分子メカニズムに基づいた様々な新しい治療法が開発されており,大きな期待が寄せられている。本稿では,AMLの病態生理に関する最新の知見をまとめるとともに,エピゲノム治療や免疫療法など新しいAMLの治療戦略について紹介する。