臨床血液
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Symposium 6
多発性骨髄腫に見られる細胞接着を介した薬剤耐性獲得のエピジェネティク制御
古川 雄祐菊池 次郎
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2016 年 57 巻 5 号 p. 546-555

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抄録

多発性骨髄腫においては骨髄間質細胞との接着によって抗がん剤耐性が誘導されるが,そのメカニズムについては不明の点が多い。本研究においては接着耐性獲得のエピジェネティク制御機構の解明を試みた。間質細胞との接着によって抗がん剤耐性が獲得される際にhistone H3-lysine 27 (H3-K27)のトリメチル化が特異的に抑制されることがわかった。そこでH3-K27メチル化酵素EZH2をsiRNAまたは特異的阻害剤で抑制すると薬剤耐性が誘導された。ストローマ細胞との接着によりIGF-1受容体-PI3K-Akt経路を介してEZH2のserine-21がリン酸化され,メチル化活性を失うことで抗がん剤抵抗性が獲得される。その際のエフェクター分子として,抗アポトーシス分子Bcl-2・接着分子・サイトカイン(IGF-1, TGF-β)・ABCトランスポーター・HIF-1αなどが考えられた。以上の結果は,多発性骨髄腫の接着耐性におけるエピジェネティック機構を明らかにした初めての報告である。IGF-1受容体-PI3K-Akt経路の阻害剤は接着耐性の解除に有効と考えられる。

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© 2016 一般社団法人 日本血液学会
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