2017 年 58 巻 10 号 p. 2012-2019
ATLの治療は,新規薬剤の参入や血液幹細胞移植の積極的導入などの動きを受けて,様々な治療研究が進められて活性化している。しかしながら,患者の生命予後の改善はいまだに限界がある。この現状を踏まえて,ATLの治療戦略に関する枠組みの見直しを検討する時期であると考える。新たな戦略構築には,ウイルスの感染から感染Tリンパ球のクローン性増殖,ゲノムおよびエピゲノムの異常の蓄積を経て腫瘍性増殖に至るin vivoの現象に関する知見に基づいて,感染予防・発症予防・個別化治療の全体を有機的に連携した枠組みを考えるべきである。その実現を可能にする必須の基盤の一つとして,ATL発症高危険群を「慢性活動性HTLV-1感染症」という新たな疾患概念として捉え直すことを提唱し,新規の知見を基盤とした新たな診断と発症予防・治療への展開につながる研究の現状を紹介する。