2017 年 58 巻 10 号 p. 2043-2049
Programmed cell death-1(PD-1)シグナル経路はT細胞免疫を負の方向へ制御する調節機構である。PD-1は生理的および病的なT細胞の機能調節に関与し,腫瘍の免疫逃避機構にも関わることが知られる。PD-1やPD-1リガンドの阻害薬は様々な悪性腫瘍の治療において有望であることがこれまでに多くの臨床試験で示されている。その中でも古典的ホジキンリンパ腫に対する治療効果は顕著であり,国内では2016年末にニボルマブが同疾患に対し適応承認された。また,他のいくつかのリンパ腫病型に対してもPD-1阻害薬の有効性を示唆する報告が出始めている。PD-1阻害薬は安全性の高い薬剤であるが,皮膚・肺・甲状腺・腸管など様々な臓器を標的とする免疫関連副作用を生じうることが知られており,これらは稀ながら命に関わる病態にも進展しうることから,治療中は慎重に観察を行うことが推奨されている。