2018 年 59 巻 8 号 p. 1058-1065
キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor, CAR)は,腫瘍抗原に結合するモノクローナル抗体の可変部領域を単鎖抗体の形で利用し,そこにCD3ζの細胞内シグナルドメインを結合させたキメラ分子である。自家移植にCD19-CAR-T輸注を併用する骨髄腫を対象とした臨床試験において一定の治療効果(sCR: 1, VGPR: 1, PR: 2)が報告されている。本治療ではCD19陽性細胞分画に存在する薬剤耐性クローンや,骨髄腫細胞を供給する幹細胞への直接的抗腫瘍効果と腫瘍細胞の維持に関わる非腫瘍性のCD19陽性B細胞が標的となる間接的効果がもたらされている可能性がある。新規CARとしてCD138,CD38,κ鎖等の分化抗原特異的CARが開発されている。またB-cell maturation antigen特異的CAR-T療法の第一相臨床試験では,12例の難治性骨髄腫症例のうち最大輸注量のコホートの2例で,sCRを含む治療効果を得ている。難治性骨髄腫に対するCARを用いた免疫療法の開発はまだ端緒についたばかりだが,近年,この分野に大手製薬企業も参入してきており,開発のスピードやスケールが加速している。