2019 年 60 巻 7 号 p. 767-772
BCR-ABL1 International Scale(IS)測定はチロシンキナーゼ阻害剤で治療されている慢性骨髄性白血病(CML)患者の治療効果をモニターする上で重要な検査法である。稀ではあるが,BCR-ABL1 IS測定ができないCMLが存在することが知られている。本研究において,我々は,そのようなBCR-ABL1 IS測定のできないCML患者を経験し,分子生物学的な方法で,その原因を解明した。本例ではABL1遺伝子における切断点がa2エクソン内にあることが分かり,そのことがABL1のa2エクソンを欠いたe14a3(b3a3)キメラ遺伝子のmRNAのみの発現を誘導していた。a2エクソンは本邦における検査部でのIS測定において重要な要素であり,これが欠損することが測定不能の原因であった。このようなIS測定ができない稀なCML症例をさらに集積して,その分子構造を解明することが待たれる。