2020 年 61 巻 4 号 p. 318-321
Howell-Jolly小体の出現と脾臓低形成を伴う劇症型肺炎球菌感染症を報告する。症例は71歳の男性。IgG-κ型多発性骨髄腫への外来化学療法中に発熱があり来院。侵襲性肺炎球菌感染症による敗血症性ショックと診断された。来院時の末梢血塗抹標本上Howell-Jolly小体がみられた。CT上著明な脾臓低形成があり,脾機能低下の存在が考えられた。抗菌療法開始後肺炎球菌感染症は治癒したが,脾臓低形成に著変はなかった。脾臓低形成は,致死的感染症を合併しうるため,高齢者やがん患者,免疫抑制療法中の患者は注意を要する。自動血球分析装置が普及した現在,末梢血塗抹標本の鏡検が全例で行われるとは限らない。Howell-Jolly小体が簡便で迅速な脾機能低下のスクリーニングに役立つ可能性が示唆され,鏡検でのHowell-Jolly小体の観察の重要性を再評価すべきと考えられた。