2021 年 62 巻 1 号 p. 35-41
症例は72歳男性。2017年8月に白血球増多,貧血,リンパ節腫大を認め,慢性リンパ性白血病と診断されたが,治療開始基準を満たさず経過観察となった。2018年7月,17p deletion(del 17p)獲得に伴う病勢進行のためibrutinib(IBR)420 mg/日を開始し,一過性のリンパ球増多後に,部分奏効を得た。IBRは皮膚や爪を構成するケラチン間のジスルフィド結合の障害,off-target効果によるepidermal growth factor receptor阻害を介して爪囲炎・皮膚障害を誘発する。2019年2月に右第1趾に爪囲炎(grade 1)をきたしたが,gentamicin塗布では改善しなかった。同年7月,両側第1趾の肉芽形成・爪囲炎(grade 2)に対してテーピング処置・硝酸銀法による局所療法を実施して軽快した。これらの肉芽形成・爪囲炎に対するマネジメントにより,CLLに対してIBRを減量・休薬することなく継続し,良好に病勢コントロールできている。