臨床血液
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48 (EL-48)
新興感染症と輸血
米村 雄士
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2021 年 62 巻 8 号 p. 1296-1301

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抄録

血液製剤による感染症は,B型肝炎,C型肝炎,HIV感染症などが有名であったが,最近ではほとんど報告がなくなってきた。2011年,E型肝炎ウイルス(HEV)抗体検査が保険収載され,輸血によるHEV感染例が一定数報告され,2019年には5例認めた。そこで,日本赤十字社は,2020年8月より献血者に対しHEV個別NATを導入し,輸血HEV感染は減少すると思われる。また2016年8月から,一部の献血者に対しTrypanosoma cruzi抗体検査が導入され,輸血によるChagas病感染リスク対策も行っている。今後,輸血後感染症として,細菌感染症や海外で起こっている血液を介する新興感染症対策が重要である。デング熱,ウェストナイル熱,ジカ熱,チクングニア熱などの新興感染症が,国内で発生した場合にその対策をシミュレーションし,献血時に行う検査,または献血を中止する基準などを準備しておくべきであろう。

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© 2021 一般社団法人 日本血液学会
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