2021 年 62 巻 8 号 p. 954-966
FMS-like tyrosine kinase 3(FLT3)変異は急性骨髄性白血病(AML)の約30%と最も高頻度に認められる遺伝子変異の一つであり,FLT3-internal tandem duplication(ITD)変異は予後不良因子の一つである。若年者においては依然第一寛解期での同種移植が標準的治療ではある中,近年,FLT3阻害薬の開発が進み,FLT3変異陽性AMLに対する治療戦略は変化を遂げている。米国,欧州で認可されているmidostaurinをはじめ,多くのFLT3阻害薬が寛解導入療法併用,寛解後療法,同種移植後維持療法など多様な状況下での効果を臨床試験で検証されている。本邦でも再発または難治性FLT3-ITD変異陽性AMLに対して2018年にgilteritinib,2019年にquizartinibと,2剤のFLT3阻害薬による単剤治療が承認され,今後,治療成績の改善が期待される。一方,耐性化機序の解明など克服すべき課題は多い。