臨床血液
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症例報告
Emicizumabによる出血抑制下でインヒビターの自然消失を認めた軽症血友病A
松本 彬小川 孔幸内山 由理石川 哲也内藤 千晶小林 宣彦宮澤 悠里石埼 卓馬井上 まどか茂木 裕一北沢 早希村上 正巳松本 直通半田 寛
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2022 年 63 巻 10 号 p. 1392-1396

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抄録

症例は63歳の男性。幼少期より抜歯や鼻出血時の止血困難,打撲部腫脹を自覚していた。2016年11月(60歳時)に右臀部打撲の腫脹を契機に前医で軽症血友病A(FVIII:C 8.5%)と診断,FVIII製剤に初回暴露した。2017年10月に右肩打撲でオンデマンド治療を受けた。2019年3月から肩関節周囲の出血を頻回に繰り返し,適宜FVIII製剤投与を受けるも止血不良のため,精査を実施。FVIII:C<1%に低下し,低力価インヒビター(2 BU/ml)を検出したため,当科紹介となった。両側前腕の新規皮下出血と右肩血腫を認め,rFVIIa製剤で止血治療を行った。止血後にemicizumabを導入し,ローディング後に3.0 mg/kg/回,2週間毎の定期投与を継続した。導入後約2ヶ月でインヒビター検出感度以下となり,9ヶ月後にFVIII活性も8%まで上昇した。我々は高齢で初診断されたインヒビター合併軽症血友病A症例を経験した。非重症血友病Aのインヒビター発生率は約10%で,70%は自然消失する。本例においてemicizumabによる出血抑制がインヒビター自然消失の一助となった可能性がある。

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© 2022 一般社団法人 日本血液学会
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