2022 年 63 巻 4 号 p. 254-259
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の約半数程度が基礎疾患に由来する続発性で,腫瘍随伴症候群によるものが多い。近年,高齢化やがん患者の長期生存率が上昇しており,異時性重複がんの発症が増加している。症例は78歳,女性。2017年5月にS状結腸がん,同年10月に温式AIHAと診断された。温式AIHAに対してprednisolone(PSL)が投与され,貧血症状は軽快した。2020年1月に温式AIHAの再燃が認められ,PSLが再開された。同年5月に小腸穿孔による穿孔性腹膜炎を発症した。腹腔鏡下小腸切除術が行われ,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断された。悪性腫瘍の既往があり,AIHA診断から長期間が経過した場合でも,AIHAの再燃がみられた場合には異時性重複がんの可能性も考え,悪性腫瘍の検索を進めていくことが重要である。