2022 年 63 巻 9 号 p. 1233-1241
抗血小板第4因子(PF4)抗体は,抗PF4/heparin複合体抗体として知られ,heparin起因性血小板減少症(HIT)の診断目的で測定される。HITではheparin曝露により産生される抗PF4抗体が原因で血小板減少症と血栓症を引き起こす疾患であるが,2021年,新型コロナウイルス感染症に対して開発されたアデノウイルスベクターワクチン後に発症する致死的なワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)に抗PF4抗体が関与していることが報告された。HITとVITTは抗PF4抗体が原因であるという点で合致し,病態も類似している一方,重症度が大きく異なり,また抗PF4抗体の測定法により検出感度が異なるなど合致しない点もみられる。本稿では抗PF4抗体に関連したHITとVITTについて概説する。