御料林における森林鉄道は、伐木作業員向けの物資輸送を目的として敷設されていた阿寺軽便軌道を明治40(1907)年に木材輸送用として改良したことに始まる。その後、順次、森林鉄道が開設されるが、その多くは大正期後半以降の竣工であり山林局所管国有林に比べ後発であった。その要因は、御料林が主要河川流域にまとまって編入され、木材の河川流送が確保されたことにより陸送への転換圧力が大きくなかったことによる。なお、大正期に入ると主要河川は電源開発の対象となり、木材輸送手段の陸送への転換が不可欠とされたが、御料林では木材を大都市部に輸送する方式を採用していたことから普通鉄道との接続が森林鉄道導入の前提となった。本論では、御料林において開設された森林鉄道の概要を把握した上で、その開設の状況から、森林鉄道導入の要因及び普通鉄道との接続状況について明らかにする。なお、森林鉄道の開設経費に影響を与えた昭和天皇の御下問問題にも触れる。