抄録
本論文は、わが国で継続的に生産されている工芸品を対象とした研究分野を取り上げ、これまでの研究動向を整理するとともに、地域資源管理にも着目して研究の方向性の検討を行った。具体的には、伝統工芸品産業としての盛衰と現状の把握、当該産業を対象とした研究動向の整理を行い、その上で、当該産業に対する社会的支援の可能性について展望した。その結果、当該産業を対象とした研究は、蓄積がまだまだ少ないことを指摘した。その理由として、当該産業には多品種・多品目の製品が存在し、どちらかというとデータを得にくい領域であることが挙げられ、研究対象となり難かったためであると考えられる。今後は、個別具体的な製品を対象とした事例研究を積み重ねるとともに、五つの研究視点から伝統工芸品にアプローチすることにより、今日のわが国における伝統工芸品の位置づけを明らかにし、継続的に生産するための社会的支援を講じていく必要があると結論づけた。