林業経済
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インドネシアの国有林におけるゴムノキ植林を通した住民参加による荒廃地緑化(論文)
南カリマンタン州タナー・ラウト県での成功要因
仲摩 栄一郎 田中 一生マハルス アルヤディハムダニ ファウジトゥリスヌ サトリヤディ平塚 基志太田 誠一森川 靖
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2019 年 72 巻 1 号 p. 1-17

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抄録
近年インドネシア環境林業省は、森林区域の管理を住民と協働して改善するために、社会林業プログラムを積極的に展開している。本研究は、南カリマンタン州タナー・ラウト県の国有林(保安林)内において、この社会林業プログラムのうちコミュニティ林制度を適用した住民参加によるゴムノキ植林を通した荒廃地緑化プロジェクトを対象として、その成功要因を明らかにすることを目的とした。本事例では、地元大学のファシリテートにより、比較的土地所有面積が小さい世帯が参加住民として選定され、彼らに国有林の土地使用権(35年間)がインドネシア環境林業省より正式に認められた。また、地元のゴム企業農園により優良品種のゴムノキ苗木が無償提供されるとともに栽培技術指導が行われた。さらに、プロジェクトにより植栽作業労賃の半額が支給された。その結果、これまで度重なる山火事により荒廃草地と化した国有林の緑化に成功した。参加住民は、植栽5~6年後から始まるゴムノキ樹液の採取・販売による安定的な収入を期待しており、ゴムノキ植林地を山火事から防止するインセンティブが有効に機能している。今後、社会林業プログラムを通した国有林内の荒廃地の緑化を推進するにあたっては、外部のサポートにより、参加住民を選定する際に貧困層を優先するなどして公平性を担保すること、並びに、緑化した森林から参加住民が安定的に収入を得られることを制度的、技術的及び資金的に保障することが重要であると考えられた。
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© 2019 一般財団法人 林業経済研究所
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