現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
Print ISSN : 1881-7467
ルソーにおける「最初の約束」の成立様式について
田中 秀生
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 1 巻 p. 100-113

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抄録
社会契約論は原子論的個人を基本単位とし、その利己的振舞いから社会および国家の設立を説明する論理であり、その意味で近代初頭には、社会の近代化を進める論理として用いられた。18世紀フランスに生きたジャン=ジャック・ルソーも社会契約論者の一人として、主要著作の一つである『社会契約論』を著したが、いまだ解明されるべき論点が残されている難解な著作である。本論文の目的は、社会学における秩序問題を念頭に置きつつ、『社会契約論』において「社会契約」と「最初の約束」は区別され、後者が前者に先行し、かつその基礎になっているという考えに基づき、ルソー的社会体が描写されている他の著作も参照することによって、この「最初の約束」の成立様式とそれに伴う当事者の特徴を明らかにすることにある。そのために、まずルソーの論理的探究から見出される「最初の約束」の循環性の問題点を見極め、そこから出てくる法と徳の対照における徳の意味、さらに先の循環性を脱するためにルソーが特異な人物形象を援用しつつ当事者の前意識的次元に働きかけるその方法、および、それによって結局「最初の約束」の当事者がいかなる様式においてこの約束を成立させることになるか、等を考察した。
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© 2007 日本社会学理論学会
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