抄録
本研究では経済成長の進む中国を事例とし、社会経済要因が森林面積の変化に与えた影響を定量的に把握することを目的とした。1993~2013年を分析期間とし、中国にある30の省に対して時系列データを用いた分析を行った。森林面積と経済水準との関係がU字型や逆N字型を描くという仮説を検証すべく、1人当たりGDPとその2乗項や3乗項を組み込んだ非線形モデルを推定した。AIC(赤池情報量規準)などを用いて選択されたモデルの推定結果から、多くの省では分析期間内において1人当たりGDPが増加すると森林面積も増加する傾向がみられること、森林面積の増加スピードは一様ではないこと、省によっては将来的に減少に転じる可能性のあることが示された。また、係数の値から1人当たりGDPが森林面積に対して最も大きな影響を与えていることが分かった。