日本薬理学雑誌
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特集:革新的心不全治療戦略創出を指向した心機能制御機構の新たな展開
新たな心不全治療標的分子としての基底膜由来matricryptinsの可能性
岡田 宗善山脇 英之
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2018 年 151 巻 3 号 p. 106-110

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抄録

細胞外マトリックス(extracellular matrix:ECM)は組織構造の維持だけでなく周辺細胞機能の調節も担う組織形成に欠かせない高分子群である.近年,ECM分解断片群「matricryptins」が産生源のECMとは異なる生理活性を持つ新たな内因性生理活性因子として数多く同定されている.なかでも基底膜由来matricryptinsの多くは抗血管新生作用や抗腫瘍作用を有しており,抗腫瘍薬としての応用を目指した研究が広くなされている.一方,幾つかの心疾患モデルの心臓組織や心疾患患者の血中で基底膜由来matricryptins発現が変動するという報告があり,心疾患の発症・進展においても基底膜由来matricryptinsが何らかの役割を担う可能性が示唆されている.本稿では当研究室がこれまでに明らかにしてきた心臓における作用を中心に,心不全治療の新規標的因子としての基底膜由来matricryptinsの可能性を紹介したい.

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