抄録
本研究の目的は、1950年代~2015年のパルプ企業とチップ業者の組織間関係を、通時的な需給環境の変化と関連させて、明らかにすることである。分析視角としては、経営学の組織間関係論における資源依存と取引費用、チャネル・パワー論の取引依存度の概念を援用し、地域別パルプ企業数と国産チップ使用比率から、木材チップ取引におけるパルプ企業とチップ業者の組織間関係の変容を分析した。研究手法には、既往文献・統計資料分析およびチップ業者への聞き取り調査を用いた。その結果、需給逼迫期の系列取引体制の構築から、輸入チップ導入による供給者の多角化とパルプ企業の合併による需要者数の減少に伴い、パルプ企業の交渉力優位が歴史的に固定化していったことが明らかになった。しかし、近年のバイオマス発電所の増加による木材チップ需要者の増加は、既存の流通形態の影響を受けながらも、その取引関係に変化を促しつつある可能性が示唆された。