抄録
中国は2003年から段階的に「集団林権制度改革」(以下「林改」)を実施してきた。この政策は、主に林木や林地をめぐる財産権としての林権を農家世帯に分配することで、積極的な経営意欲を喚起することを目的とした。本稿は、世帯あたりの平均森林面積が小規模地域である江西省井崗山市に注目し、呉ら (2019) のアンケート調査結果を計量経済モデルに当てはめ、森林経営のインセンティブに影響する要素を実証的に解明した。その結果、①林権の自由行使が経営のインセンティブに概ね正の影響を与えていること、②林権のうち処分権は影響を与えていないこと、③林業への従事経験がもっとも影響を与えていること、④公益林の指定および補償金の影響を除き、林改に対する評価については顕著な影響はみられないことが明らかとなった。以上の結果を踏まえ、インセンティブの向上には、林改の施策内容の周知、森林経営の基本を含む林業技術支援サービスの提供、林道開設などのインフラ整備が必要と提言した。