抄録
本論では、近世前期において土佐山内家が江戸幕府に材木を納入した際に作成した目録などの史料から、納入材木の樹種・規格・寸法・品質を分析することで当該期における幕府の材木需要の解明を試みた。まず、納入材木目録と材木需要との関係に着目した唯一の先行研究である石躍胤央の研究を再検討した。その結果、根拠とされた明暦3 (1657) 年「有合材木目録」作成の目的が、土佐国内で調達可能な材木を先行して示すという緊急的な措置として作成された点を明らかにした。
次に、元和9 (1623) 年「御役御材木目録」を詳細に分析した。この目録は幕府が主導して作成したものであり、記載された樹種は桧・杉の2種、規格は角材・宍料などで、品質は節無し材木を中心としていた点を究明した。
最後に、寛永13 (1636) 年の江戸城普請に関わり作成された寛永11年「御役御材木目録」を詳細に分析した。寛永11年「御役御材木目録」は幕府側の材木需要を考慮しながら、土佐国内の実状を踏まえて山内家が作成したものであることを究明した。この目録を幕府が承認している事実から両目録に記載された樹種・規格が幕府の材木需要を満たすものであると結論づけた。