本研究は,日本における外国語教育の中で生じている複言語教育を解明する研究の一環である。複言語教育の主要なアプローチの一つである言語の統合的教授法(DIL)がどのような形態で見られるかを探るため,本稿は日本で出版されている外国語としてのフランス語(FLE)教科書に焦点を当てた。その結果,(1)調査対象となった37冊のFLE教科書のうち大半が,一部を除き,DILの要素を一切示していないが,(2)アンケート調査の結果から,大学生の大多数が,既存の言語レパートリーとの比較に基づく指導に利点を見出していることが明らかになった。この知見は,今後の教科書の開発や,複言語教師の育成に示唆を与えるものである。