2024 年 19 巻 1-2 号 p. 60-76
本稿の目的は日本で出版されたFLE教科書の教授法的な性質を正確に捉えることである。そのために,まず日本のFLE史の中で伝統的な文法訳読法と並んで,直接法,S.G.A.V.,コミュニカティブ・アプローチがどのように取り入れられてきたかを精査し,印刷技術の発展という観点を参照しつつ,教授法の変化のダイナミズムを明らかにした。次にH. Besse(1985,2000)の基準に基づいて教科書の内容を解析する方法を試み,「コミュニケーション型」の教科書の中にも,伝統的な文法訳読法に基づく方法の痕跡が存在すること,また,教科書作成者のプロフィールが,教科書内で提示される帰納的アプローチや各課で提案される練習問題の数に影響を与えることを明らかにした。