抄録
フランス語教育は,より大きな教育の枠組みの中にあり,その枠組みには民主的な社会(共同体)を支える市民を育成するという理念がある。例えば大学では,学生を教育して職業生活,社会生活,市民生活に備えさせねばならないが,外国語としてのフランス語を教える教室で,どのようにしたらそのような教育目標に貢献できるかは明白ではない。ひとつの可能性として「協同学習」と呼ばれるアプローチを採ってみるということが考えられる。教室を互いに助け合い,尊重し合う共同体とし,そこで学ぶために協同し,同時に協同を学ぶのである。協同学習は社会心理学や,構築主義を基盤としているが,仲間が目標を達せられない限り自分も目標を達成できない(「肯定的相互依存」),という状況をつくる。したがって教室では,自分と仲間のために学ぶという状況が生ずる。このような状況における学びとは,個別的,個人主義的なプロセスというよりは社会的,共同体的,協同的なプロセスとなり,民主的な市民教育へとつながる大きな可能性を秘めている。