2012 年 7 巻 2 号 p. 35-51
本論文の目的は,2005年秋に発生した「暴動」を事例に,ニコラ・サルコジ内相(当時)へのテレビ・インタビューを資料として談話分析を行い,そこで何が「問題」として語られているのかを明らかにすることである。とりわけ,「暴動」の主体としてカテゴリー化される対象に注目し,談話によってそれが実体化される点を批判的に検討する。分析の結果,談話の社会性から考えられるその問題点を2点指摘した。第一に,「暴動」が「フランス(人)の外部にある」ものとみなされ,「取締り」が正当化されるという点。第二に,「不良」や「若者」といった語が,「外国人」や「イスラム」と関連付けられて語られることで,それらが混同され,フランスにおける「暴動」が,「外部」的な「問題」として談話の中で構築され,社会のなかで認知され得るという点である。