マニュアルには、知識や技術、技能の継承に不可欠な暗黙知の要素を欠いたものが多くある。団塊世代の大量退職によって労働力が減少する中で、既存のマニュアルを暗黙知を含むマニュアルへ改善する必要がある。筆者はこれまで、マニュアルの分析を行う中で、マニュアル内の図や表の存在は読み手の理解を大きく左右する要素であり、図表とその説明文の関係性が重要であることを明らかにした。図はその説明文がなければ成り立たないが、世界記憶遺産としても知られる山本作兵衛による炭坑記録画は絵表現の中に文章が存在し、炭坑記録画のみで内容を解釈することができる。マニュアルを使用する場面(特に作業現場)においては、炭坑記録画のような絵のみで内容を解釈できる手法が有用である。本研究では山本作兵衛の描いた炭坑記録画に着目し、鉄道車両メンテナンスマニュアルを含む一般的なマニュアル内の図と山本作兵衛の描いた絵表現の違い(絵や文の割合等)や共通点を確認し、既存のマニュアルに対して応用可能な山本作兵衛の炭坑画の特徴を抽出した。