2023 年 84 巻 p. 3-17
1980年代以降、世界各地で民主化への移行が進み旧体制下で抑圧された人々の権利の回復が求められる中、アーカイブズ資料と人権とのつながりが注目されるようになった。本稿は、アーカイブズ学の中に人権が組み込まれてきた過程とその背景にある思想を、国際アーカイブズ評議会(ICA)を中心とする国際的な取り組みから捉えることを目的とする。1997年と2009年のレポート及び2003年CITRA決議文の分析から、アーカイブズ資料が個人の権利を保障する手段になるという共通理解に基づきアーキビストの行動指針が示されたこと、市民グループや非政府組織の活動を背景に犠牲者の声を保存することの重要性が認識されるようになったこと、ジョアネ・オレントリッヒャー原則を基礎に集合的権利と知る権利の概念が共有され、記録の保存のための基本的な考え方が形成されたことを導いた。これらは、今日人権に関わるアーキビストの活動の源泉となっている。