2018 年 6 巻 1 号 p. 43-51
本研究は原爆傷害調査委員会(以下:ABCC)に勤務していた看護婦および医師の証言から、広島ABCC設立草創期の健康調査および健康診査における看護活動を明らかにすることを目的とした。研究方法は広島ABCCで勤務していた元ABCC日本人医師1名、看護婦3名を対象に半構造化面接を実施し、オーラルヒストリー法を用いて証言を分析した。結果、健康調査、健康診査における主な看護は診療の介助であったが、各診療科では健康調査の目的や調査概要によって重要とされる視点に基づき、看護を実施していたことが示唆された。また、調査研究機関として精密なデータを収集するという役割があり、被爆者に対する言動や調査方法に配慮した看護が行われていたことが明らかとなった。ABCCの活動に対して被爆者から否定的な言動もみられたが、被爆者の感情に配慮した看護活動は、健康調査および健康診査に対する緊張を緩和する重要な役割があったと考える。