根の研究
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原料作物のエリアンサスとネピアグラスの根
関谷 信人塩津 文隆阿部 淳森田 茂紀
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2015 年 24 巻 1 号 p. 11-22

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抄録

エリアンサスとネピアグラスは,多年生でC4 型光合成経路を有する大型のイネ科草本である.私達は,セルロース系バイオエタノールの原料作物として利用するため,両植物種の栽培技術を研究している.原料作物は食糧生産と競合しないように荒廃地などの非農地でも栽培されるため,劣悪土壌から養水分を獲得する根の能力が必要である.また,地上部全量を系外へ持ち出してしまうため,土壌に還元される唯一の有機物となる根が土壌生産性の向上に果たす役割が非常に大きい.そこで,私達は両植物種の栽培技術だけではなく,根も同時に調査した.両植物種は,浅い土層に多くの根を発達させつつ,かなり深い土層まで到達するような根の分布を示す.その結果,単位面積当たりの現存根量が主要な食用作物と比較して非常に多い.同時に多量の根を土壌中へ脱落させている.節根は太く,多数の導管を有する中心柱には秋頃にデンプン粒が多量に蓄積する.外皮,内皮,中心柱は,他のイネ科植物とは異なる特殊な構造を示す.根毛が密に発達することでsoil sheath が付着し,皮層には空隙も形成される.硬く痩せた土地や湛水条件下で栽培しても旺盛に根を発達させ,大きな地上部を支えるための養水分を良く獲得する.さらに,地上部全量を系外へ持ち出しても土壌炭素濃度は増加する.以上のように,エリアンサスとネピアグラスは,巨大な地上部バイオマスだけではなく,根の機能面からも原料作物に適している.

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© 2015 根研究学会
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