根の研究
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ミニレビュー
  • 小柳 敦史
    2026 年35 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/02/13
    ジャーナル 認証あり

    2011年にイネで重力屈性により根の伸長角度を制御する遺伝子DRO1が発見されて以降,コムギでも根の伸長角度に関する研究が活発に行われるようになった.現時点では,コムギではDRO1のような強力な主働遺伝子は見つかっておらず,コムギの種子根の伸長角度は多くの染色体領域が関与する複雑な遺伝形質であると考えられている.コムギ品種の幼植物の種子根の伸長角度は圃場の生育の中後期の根の分布と密接な関係にあるとする報告がある一方,その関係は伸長角度の測定方法や圃場の栽培環境により一定ではないとする報告もある.種子根の伸長角度を測定する方法にはろ紙を用いる方法,寒天ゲルを用いる方法,クリアポット法,バスケット法などがあるが,その品種が生育の中後期に作る根系の形態を推測するためには,土を使うクリアポット法やバスケット法で伸長角度を測定することが望ましい.種子根の伸長角度が異なる3系統の交雑後代から,生育の後期に深い根系を作る系統と浅い根系を作る系統が作出されている.コムギ品種の幼植物の種子根の伸長角度と収量性との関係ははっきりしないが,過湿な水田圃場では浅根性の系統群が15%多収であり,長期不耕起圃場では浅根性のコムギが明らかに多収であった事例が報告されている.今後は栽培環境ごとに理想的な根系構造を明らかにし,それに応じて多くの遺伝子領域を集積して理想根系を持つコムギ品種を育成することが期待される.

  • 河合 翼, 犬飼 義明
    2026 年35 巻1 号 p. 9-22
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル オープンアクセス

    イネの側根には,形態・組織構造および機能の異なるS型側根とL型側根の2種類が存在する.天水田や圧縮土壌など根域が制限された環境下では,乾燥や主軸根の伸長阻害に応答した側根の可塑的発達が,地上部生育維持に重要となる.しかし,普段目に見えない根系の可塑的形質は観察・評価が困難で,可塑的な側根発生制御の分子機構は未解明であった.そこで著者らのグループでは,種子根の根端切除によりL型側根形成を人為的に誘導する手法を用い,イネの可塑的な側根形態制御機構を解析した.根端切除に野生株と異なる応答を示す変異体の解析およびS型 / L型側根原基のトランスクリプトーム解析から,WUSCHEL-RELATED HOMEOBOX (WOX) 転写因子群が側根原基サイズを拮抗的に制御する機構を明らかにした.さらに,側根原基におけるオーキシン分布が側根原基サイズ制御に関与し,L型側根原基では基部にオーキシンが蓄積し,側根原基サイズ制御の促進因子として働くOsWOX10の発現が誘導されることを示した.加えて,Semi-hydroponic phenotyping法を用いた栽培学的解析から,主軸根の根端切除に応答して形成されるL型側根が,失われた主軸根の機能を補償し,根系発育および地上部生育の維持に寄与することを明らかにした.本稿では,これらの研究成果を中心に,イネにおける可塑的な側根形態制御機構について解説する.

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