1990 年 10 巻 4 号 p. 585-589
南極大陸を覆う氷床に関する物理的性質を解く手がかりの一つとして,航空機搭載アイスレーダによって求められた棚氷下部の散乱特性について報告した。
棚氷の底面では融解,凍結といった氷と海水の相互作用が起きていると推定されているが,その計測は今まではボーリングによる直接的な観測しかなかった。
この海水との相互作用により棚氷の質量収支モデルが立てられているが棚氷底面での相互作用のプロセスが棚氷の質量収支にどの様にどの程度寄与しているかは現在のところよくわかっていない。
本方法より棚氷の底面の粗さが棚氷の場所によって異なることが間接的に求められたが,棚氷の底面の粗さはこうしたプロセスの結果と考えることができ,棚氷の質量収支のモデルを完成するのに大きなヒントを与えることが期待される。